北アルプスの山に登ってみたい、と同僚の先輩に言われ、
はたして自分にはそんな体力があるのか・・?と我が身を振り返りました。
今年の夏は尋常でない暑さに痛めつけられ、
自宅の中を5mほどしか移動せずミユビナマケモノのような生活を送っていたため
確実に筋力も体力も根性もなくなっている。
さしあたり、あまり高低差のないところで体力の様子を見ようと
車山にやって来ました。
さすが行楽シーズン、車山肩の駐車場が非常に混んでいました。

青空に車山とその山頂の気象レーダーが映えています。
今回はカフェの脇から、車山と蝶々深山の間の道に入ります。

途中、木道のある場所も少しありますが、基本的には中くらいの石がゴロゴロした道が続くので
足元はトレッキングシューズなど、しっかりしたものがよいと思います。
左手に蝶々深山、右手に車山を見ながら進みます。

実は、車山・霧ヶ峰周辺の散策マップを見ると、いつも気になる地名がありました。
「北の耳」「南の耳」。
耳とは・・・?
さっき車山肩という地名を見たが、耳もある・・?
人なのか・・・?
という疑問が気になって頭から離れず、とにかく一回見てみよう、と
南の耳に向かうことにしたのでした。
ちなみに山で言う「肩」とは、山頂から少し下がったところにある平らな部分だそうです。

30分ほど歩いて、分岐の標識に「南の耳」の文字が出てきました。
夏の終わりの強い日差しが首のあたりをじりじりと焼いていて日焼けが気になりますが、
時折、ひんやりと気持ちのよい風が吹いてきて、季節が進んでいるのを感じます。
ところどころに小さな花も咲いていました。

そして、おそらく、目的地が見えてきました。

こぶのような峰が二つ並んでいます。

近づくほどに、手前の峰の内側の急傾斜がはっきり見えてきます。
なるほど、耳です。
ピークが二つある山を双耳峰と呼ぶことを思い出しました。
近づくほど、と言いましたが、この山は見えているのになかなか近づけませんでした。

霧ヶ峰高原周辺は高い木々がなく、草原の中を歩いていくため、見通しがよく
目的地が見えていることで道に迷う心配があまりない反面、
なまじ遠くの山まで見えるためすぐに辿り着けそうに錯覚してしまうこともあります。
ゆるウォーキングの基本理念は「無理をしない」なので、
極力行き当たりばったりは避け、
トレッキングや低山でも事前に地図などで所用時間を確認し、
自分の体力や技術と相談して、目的地をしっかり決めてから出かけているのでした。
それによると、分岐から南の耳までは1時間程度、とあります。
およそ1時間の道のりがほとんど見えているというのも
なんというか、遠い。
耳が遠い。(←?)

虹の根元に向かう感覚で(虹とは違い、いずれは着くのだが)黙々と、
水を飲んでは休み、写真を撮るふりをして休み、チョウを追いかけては休んで
分岐からきっちり1時間かかって南の耳に到着しました。

長く歩いて達成感はありますが、車山肩の駐車場のあたりからの
標高差が40mほどしかないので、歩きやすい行程ではあります。
周囲を見渡すと、道の先にはお隣の「北の耳」があり、
遠くに蝶々深山を超えるルートの先の「物見岩」が小さく見えます。

しかし、足元を見ると、南の耳を下りて北の耳に向かう道が、
恐ろしく急です。

ここからまた同じ時間をかけて来た道を戻ることを考え、
無理をせずここで引き返します。
いつか体力がついたら、北の耳から「ゼブラ山」「八島ヶ原湿原」まで
周回してみたいものです。
おそらく4~5時間かかることでしょう。今の時点では気が遠くなります。

帰りの道では少し日が陰ってきて、
ヤマラッキョウの花にシジミチョウが2匹もとまっていたり
ツマグロヒョウモンがひらひらと飛ぶのを観察したりしながら
ゆっくり快適に歩きました。
今度は車山がずっとほぼ同じ大きさで見えていて、
途中、少し心が折れました。
先輩、多分、自分は北アルプスには行けない気がします。
